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診療内容

PFO


卵円孔開存が原因の脳梗塞に対する治療法 PFO 経皮的卵円孔閉鎖術

卵円孔開存と脳梗塞

卵円孔開存(PFO:Patent Foramen Ovale)とは、右心房と左心房を分ける壁(心房中隔)に小さな孔が開いていることをいい、成人の2~3割に認められます(図1)。通常自覚症状を感じることはなく問題となることはありませんが、まれに下肢静脈などにできた血の塊(血栓)が心臓に流れていき、開存している卵円孔を介して右心房から左心房へと流れ、動脈系の血管に流れていくことがあります。その結果、脳に流れていき脳の血管が詰まってしまうと脳梗塞や一過性脳虚血発作を引き起こすことがあります。このような脳梗塞を『奇異性脳塞栓症』といいます(図2)。

脳梗塞の病態は多岐にわたりますが、その中で、原因が特定困難な塞栓源不明脳塞栓症が近年注目されています。特に若年性(60歳以下)の塞栓源不明脳塞栓症患者では『奇異性塞栓症』が多いと言われています。下肢静脈に血栓が出来た場合に、卵円孔開存があると奇異性塞栓症を発症します。若年性脳塞栓症の主な原因であり、再発予防のために卵円孔の閉鎖が必要となります。
図1 卵円孔開存のイメージ

© Abbott. All Rights Reserved.

図2 奇異性脳塞栓症のイメージ

© Abbott. All Rights Reserved.

経皮的卵円孔開存閉鎖術(PFO)の目的と必要性

これまで胸を開く手術(開胸術)や血栓を溶解する抗凝固薬(血をサラサラにする薬)を一生涯内服して予防する方法が行われてきました。どちらの治療も有効であることが証明されています。
そのため、まずは若年性の脳梗塞になった方は、心臓エコーでこの卵円孔開存がないか、しっかりとチェックする必要があります。その後、閉鎖術が必要かどうか判断し、内服による治療もしくは侵襲的な治療として開胸やカテーテルによる治療(図3)が出来るか判断します。
近年の研究ではカテーテルによる治療が内服治療と比較して脳梗塞の再発をより予防できることが証明されました。また、胸を開く手術と比較して低侵襲であることは患者さんにとってとてもメリットが高いことだと考えられます。
図3 治療に使用する経皮的卵円孔開存閉鎖術デバイス

© Abbott. All Rights Reserved.

経皮的卵円孔開存閉鎖術のメリット

  1. 身体への負担が少ない
    カテーテルによる手術のため傷口は小さく、入院期間も4~5日※ほどです。
    ※患者さんの病状や体調などにより入院期間が延びる場合があります。

  2. 抗凝固薬による出血を防ぐ
    治療後は抗凝固療法(ワルファリン)を中止し、抗血小板剤の内服を開始し定期的な診療を行います。
    治療後半年以降は問題なければ担当医師の判断で抗血小板剤も中止することが可能です。

  3. 卵円孔経由での脳梗塞の再発を予防する
    卵円孔を閉鎖することで抗凝固薬の内服なしに卵円孔を経由した脳梗塞の再発を予防できます。

経皮的卵円孔開存閉鎖術の対象となる方

原則60歳未満の方で卵円孔開存(PFO)の関与があり潜因性脳梗塞の診断基準に合致した方
なお、以下に該当する方は適用できません。
  1. 心臓内に腫瘤、疣贅(いぼ)又は腫瘍が認められる方
  2. 留置予定部位に血栓を有する方
  3. 卵円孔開存部にアクセスするための血管に静脈血栓があると診断されている方
  4. 卵円孔開存部にアクセスするための血管に適切なサイズのシースを挿入できない方
  5. 活動期心内膜炎、または感染症が完治していない方
  6. 心臓内又は血管内の構造(弁、肺静脈など)により、閉鎖に必要なデバイスサイズが選択できない解剖学的構造の方
  7. 右左短絡の原因が他に確認された方(心房中隔欠損症や篩状中隔欠損を含む)
  8. 抗血小板療法及び抗凝固療法が実施できない方
  9. 凝固亢進状態にあることが既知の方
  10. ニッケルアレルギーがある、または、その可能性が疑われる方

岐阜県総合医療センターでの経皮的卵円孔開存閉鎖術の特徴

1. ハートチームを結成し治療を行います。

ハートチームの存在が不可欠です。当院は、高度なカテーテル治療の技術を持つ循環器内科医と心臓血管外科医をコアに麻酔科医、心臓画像診断専門医やME(臨床工学技士)、看護師、放射線技師、その他コメディカル、事務職員など、総合病院であることを活かし、様々な職種の専門家からなるハートチームを結成し、患者さんの治療にあたっています。

2. 総合医療センターとして心臓疾患以外の専門スタッフがあたります

患者さんの中には 「心臓疾患の他に人工透析をしている」、「心臓疾患と糖尿病の併存症がある」など、複数の病気をお持ちの方がおり、治療にあたってはその病気にも注意を要する場合があります。また、特定の専門病院の場合は術後、別の病院に移り他の治療を受けに行かなければならず、患者さんに負担がかかる恐れがあります。当院は36の診療科それぞれに専門スタッフが おりますので、院内で連携を取りながら病気を総合的に治療することができます。
術後は十分なリハビリ実施を計画し、患者さんがご自宅に帰られて日常生活にスムーズに戻ることができるよう支援し、退院して頂くようにしています。

担当医師

矢ケ﨑 裕人 先生

役職:医長

専門領域

認定医・専門医・指導医など

日本循環器学会専門医
日本内科学会認定医
日本超音波医学会超音波専門医
日本心エコー図学会SHD心エコー図認証医
日本心エコー図学会認定心エコー図専門医
日本周術期経食道心エコー認定医
心臓リハビリテーション指導士
MitraClip G4 System Training Faculty
ICD・CRT研修修了取得者
リードレスペースメーカー実施医
基本的心不全緩和ケアトレーニングコース(HEPT)受講済
WATCHMANトレーニング受講完了医

メッセージ

他県にいかずとも岐阜県内で世界標準の医療が提供できるように精進しています。循環器全般を診療しておりますが、特に心不全・集中治療・心筋症・画像診断・構造的心疾患(TAVI、MitraClip、WATCHMAN、PFO閉鎖など)を専門に診療をしています。心不全の薬物療法の最適化や最新のデバイス診療に興味がある方は是非ご相談下さい。

渡邊 亮太 先生

役職:医師

専門領域

認定医・専門医・指導医など

日本循環器学会専門医
日本内科学会認定医
日本心血管インターベンション治療学会認定医
TAVR 指導医(SAPIEN・CoreValve)
腹部大動脈ステントグラフト指導医
胸部大動脈ステントグラフト実施医
経皮的卵円孔開存閉鎖術実施医
MitraClip G4 System Training Faculty
WATCHMANトレーニング受講完了医

メッセージ

心臓弁膜症を含めた構造的心疾患および大動脈疾患に対する診療・カテーテル治療を専門としています。日進月歩のこの領域で地域医療が遅れを取ることがないよう日々努力しています。心臓弁膜症や大動脈瘤にお困りで低侵襲治療に興味がある方は是非ご相談ください。