WATCHMAN
心房細動と脳卒中
心房細動は心臓の上部にある2つの部屋(心房)が小刻みかつ不規則に拍動(細動)する不整脈です(図1)。この病気によって、心房内の血液が滞留し、特に左心耳という部位に血の塊(血栓)が形成されやすくなります(図2)。その血栓が左心耳から剥がれ、動脈を通って脳に達し、脳の血管に詰まってしまうと、脳卒中を引き起こします。心房細動の患者さんは心房細動のない人と比べて、5倍脳卒中を発症しやすいことがわかっています。
さらに、心房細動を発症した患者さんの約3分の1は将来的に脳卒中を発症することが知られています。心房細動を原因とする脳卒中は、死亡に至ったり重篤な麻痺などの機能障害を引き起こしたりする可能性が高いことが報告されています。また、非弁膜症性の心房細動では、心臓が原因で発症する脳卒中を生じさせる血栓の90%以上が左心耳から発生することがわかっています。そのため、心房細動を発症した患者さんは脳卒中や血栓による合併症を予防する必要があります。
さらに、心房細動を発症した患者さんの約3分の1は将来的に脳卒中を発症することが知られています。心房細動を原因とする脳卒中は、死亡に至ったり重篤な麻痺などの機能障害を引き起こしたりする可能性が高いことが報告されています。また、非弁膜症性の心房細動では、心臓が原因で発症する脳卒中を生じさせる血栓の90%以上が左心耳から発生することがわかっています。そのため、心房細動を発症した患者さんは脳卒中や血栓による合併症を予防する必要があります。
正常洞調律
図1
心房細動
図2
左心耳閉鎖術の低侵襲治療法
経皮的左心耳閉鎖術デバイス Watchman(ウォッチマン)とは
従来、心房細動を発症した患者さんへの治療は、抗凝固薬(血液をサラサラにする薬)を内服し血栓の形成を防ぐことを主に行っていました。実際、50年以上にわたって使用されており、多くの患者さんにとって非常に有効です。しかしながら、一部の心房細動患者さんでは、抗凝固薬の内服が必要であるにもかかわらず、出血のリスクが高いなどの理由によって、長期間の抗凝固薬の服用が困難な患者さんが存在しています。
経皮的左心耳閉鎖術デバイス Watchman™ (図3)は、医師が抗凝固薬の内服が必要と判断した非弁膜症性心房細動患者さんのうち、抗凝固薬の長期間の内服が困難と考えられる重篤な出血リスクがある場合や、以前に重篤な出血の既往のある方を対象に行われる、脳卒中予防治療の代替療法です。抗凝固薬の内服を中止し出血のリスクを下げるとともに、脳卒中の発生を予防します。
経皮的左心耳閉鎖術デバイス Watchman™ (図3)は、医師が抗凝固薬の内服が必要と判断した非弁膜症性心房細動患者さんのうち、抗凝固薬の長期間の内服が困難と考えられる重篤な出血リスクがある場合や、以前に重篤な出血の既往のある方を対象に行われる、脳卒中予防治療の代替療法です。抗凝固薬の内服を中止し出血のリスクを下げるとともに、脳卒中の発生を予防します。
心房細動による脳卒中のリスクと経皮的左心耳閉鎖術
経皮的左心耳閉鎖術デバイス Watchman™のメリット
- 身体への負担が少ない
カテーテルによる手術のため傷口が小さく、入院期間も4日ほどです。
※患者さんの症状や体調により入院期間が延びる場合があります。 - 抗凝固剤による出血を防ぐ
術後45日で92%、1年で99%の患者さんが抗凝固薬の中止に成功しています。 - 脳梗塞の原因となる血栓形成を予防する
血栓形成の90%は左心耳で起こり、そこを閉鎖することで抗凝固薬の内服なしに脳梗塞を予防します。
経皮的左心耳閉鎖術デバイス Watchman™の対象となる方
本治療は、長期にわたって抗凝固療法が必要な脳梗塞の発症リスクが高い患者さんの うち、以下項目で 1 つ以上当てはまる出血リスクの高い方が対象となります。
- HAS-BLED スコア※が 3以上の方
- 転倒にともなう外傷に対して治療を必要とした既往が複数回ある方
- びまん性脳アミロイド血管症の既往のある方
- 抗血小板薬の2剤以上の併用が長期(1年以上)にわたって必要な方
- 出血学術研究協議会(BARC)のタイプ3に該当する大出血の既往を有する方
なお、出血リスクの高い方でも以下に該当する方は適用できません。
- 心臓内(特に心房内)血栓が認められる方
- 心房中隔欠損又は卵円孔開存に対する修復治療(外科手術、デバイス留置等)
あるいは心房中隔の縫合閉鎖の既往がある方 - 左心耳の解剖学的構造が閉鎖デバイスに適応しない方
- 左心耳閉鎖術が禁忌である方(経食道心エコープローブや施術に必要なカテーテルの挿入が困難等)
- 抗凝固療法、アスピリン又はチエノピリジン系薬剤の使用が禁忌である方
岐阜県総合医療センターのWatchmanの特徴
1. ハートチームを結成し治療を行います。
左心耳閉鎖術(Watchman™)を行うには、ハートチームの存在が不可欠です。当院は、高度なカテーテル治療の技術を持つ循環器内科医と心臓血管外科医をコアに麻酔科医、心臓画像診断専門医やME(臨床工学技士)、看護師、放射線技師、その他コメディカル、事務職員など、総合病院であることを活かし、様々な職種の専門家からなるハートチームを結成し、患者さんの治療にあたっています。
2. 総合医療センターとして心臓疾患以外の専門スタッフがあたります
患者さんの中には 「心臓疾患の他に人工透析をしている」、「心臓疾患と糖尿病の併存症がある」など、複数の病気をお持ちの方がおり、治療にあたってはその病気にも注意を要する場合があります。また、特定の専門病院の場合は術後、別の病院に移り他の治療を受けに行かなければならず、患者さんに負担がかかる恐れがあります。当院は33の診療科それぞれに専門スタッフが おりますので、院内で連携を取りながら病気を総合的に治療することができます。
術後は十分なリハビリ実施を計画し、患者さんがご自宅に帰られて日常生活にスムーズに戻ることができるよう支援し、退院して頂くようにしています。
術後は十分なリハビリ実施を計画し、患者さんがご自宅に帰られて日常生活にスムーズに戻ることができるよう支援し、退院して頂くようにしています。
担当医師
割田 俊一郎 先生
役職:医長
専門領域
循環器一般 不整脈疾患
認定医・専門医・指導医など
日本循環器学会専門医
日本不整脈学会専門医
日本内科学会総合内科専門医
ICD・CRT研修修了取得者
リードレスペースメーカー実施医
WATCHMANトレーニング受講完了医
日本不整脈学会専門医
日本内科学会総合内科専門医
ICD・CRT研修修了取得者
リードレスペースメーカー実施医
WATCHMANトレーニング受講完了医
メッセージ
不整脈疾患を専門に治療を行っています。近年不整脈はカテーテル手術で治療可能な疾患が増えています。またペースメーカなどの心臓植え込みデバイスの進歩もめざましいものがあります。当院では新しい治療にも積極的に取り組んでおり、患者様の病状に合わせた最適な治療方針を提案出来るように努めています。不整脈でお困りの際は、是非ご相談下さい。
矢ケ﨑 裕人 先生
役職:医長
専門領域
認定医・専門医・指導医など
日本循環器学会専門医
日本内科学会認定医
日本超音波医学会超音波専門医
日本心エコー図学会SHD心エコー図認証医
日本心エコー図学会認定心エコー図専門医
日本周術期経食道心エコー認定医
心臓リハビリテーション指導士
MitraClip G4 System Training Faculty
ICD・CRT研修修了取得者
リードレスペースメーカー実施医
基本的心不全緩和ケアトレーニングコース(HEPT)受講済
WATCHMANトレーニング受講完了医
日本内科学会認定医
日本超音波医学会超音波専門医
日本心エコー図学会SHD心エコー図認証医
日本心エコー図学会認定心エコー図専門医
日本周術期経食道心エコー認定医
心臓リハビリテーション指導士
MitraClip G4 System Training Faculty
ICD・CRT研修修了取得者
リードレスペースメーカー実施医
基本的心不全緩和ケアトレーニングコース(HEPT)受講済
WATCHMANトレーニング受講完了医
メッセージ
他県にいかずとも岐阜県内で世界標準の医療が提供できるように精進しています。循環器全般を診療しておりますが、特に心不全・集中治療・心筋症・画像診断・構造的心疾患(TAVI、MitraClip、WATCHMAN、PFO閉鎖など)を専門に診療をしています。心不全の薬物療法の最適化や最新のデバイス診療に興味がある方は是非ご相談下さい。
渡邊 亮太 先生
役職:医師
専門領域
認定医・専門医・指導医など
日本循環器学会専門医
日本内科学会認定医
日本心血管インターベンション治療学会認定医
TAVR 指導医(SAPIEN・CoreValve)
腹部大動脈ステントグラフト指導医
胸部大動脈ステントグラフト実施医
経皮的卵円孔開存閉鎖術実施医
MitraClip G4 System Training Faculty
WATCHMANトレーニング受講完了医
日本内科学会認定医
日本心血管インターベンション治療学会認定医
TAVR 指導医(SAPIEN・CoreValve)
腹部大動脈ステントグラフト指導医
胸部大動脈ステントグラフト実施医
経皮的卵円孔開存閉鎖術実施医
MitraClip G4 System Training Faculty
WATCHMANトレーニング受講完了医
メッセージ
心臓弁膜症を含めた構造的心疾患および大動脈疾患に対する診療・カテーテル治療を専門としています。日進月歩のこの領域で地域医療が遅れを取ることがないよう日々努力しています。心臓弁膜症や大動脈瘤にお困りで低侵襲治療に興味がある方は是非ご相談ください。